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ETFでの新興国比率は実際の時価総額よりも少なくなる

当サイトでは、中国やインドなどの新興国へ多く投資することを推奨しています。その理由は、高い経済成長率ゆえの株価上昇余地の大きさと、新興国の為替レートが長期的には切り上がっていく可能性が高いことです。

では実際に、投資ポートフォリオの内、どの位を新興国に投資するのが良いのでしょうか?インデックス投資の教科書的な答えでは「各国の時価総額に応じた比率」とされています。例えば『MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス・ファンド(ACWI) 』等に代表される、先進国・新興国の両方に投資する全世界型ETFです。「これ1つで世界丸ごと投資出来る!」とインデックス投資信者に人気です。

ところが、ACWIの2010年9月末でのポートフォリオでは、新興国の比率は14%しかありません。実際には2010年末の世界の時価総額に占める新興国の割合は33.7%にも達します(※1)。ACWIでは、新興国は実際の比率の半分以下しか組み込まれていないのです。

将来的にも、新興国の株式は拡大の一途を辿ると予想されます。例えばゴールドマン・サックスが2010年に出したレポートによると、世界の株式市場に占める新興国のシェアは、2020年には44%、2030年には55%にまで拡大する可能性があると指摘しています。多分にポジショントークも含まれているでしょうが、少なくとも現在の33%より拡大する可能性は極めて高いはずです。グラフのように、新興国のウエイトは2003年には12%足らずしか無かったのが、わずか7年で30%超にまで成長しているのですから(※2)。

また、バラッサ・サミュエルソン効果という理論や、戦後の日本の経済成長と照らし合わせれば、成長力の高い新興国では通貨高が進むはずです。即ち、長期的には日本円に対して円安が進む可能性が高いはずですから、為替差益が見込める=投資比率を高くしていた方が利回りが高まる、との予測もあります。

確かに新興国の株式は、先進国よりも値動きが大きい(リスクが高い)ですし、上海台湾など(PER等が)常に割高傾向な市場も存在します。しかし『新興国が今後も高い成長を続けていく』という、ごく一般的な予測に反論を感じないのであれば、より多くの資金を新興国へ向けるべきではないでしょうか?少なくとも「投資はACWI一本でOK」なんてポートフォリオは、あまりに短絡的すぎると思います。

浮動株調整することは、個人投資家にはマイナスになる!?

ところで、ACWIで新興国の比率が低い理由は、投資比率を「浮動株調整後の時価総額加重平均」で決めているからです。インデックス投資の致命的欠点で、時価総額加重平均の問題点を述べましたが、実はこの「浮動株調整」という部分も、かなり曲者なのです。浮動株調整とは、創業者一族の持ち分や、株式持ち合いを行っている分など、流動性が無いと考えられる部分の株式を排除し、実際に市場で取引可能な分だけを時価総額としてカウントする方法です(関連;世界各国の浮動株比率)。

何故そんなことをするのかと言えば、MSCIのような巨大ファンドの場合、投資する資金量が極めて多い為、時価総額が小さい銘柄や、時価総額自体は大きくても流動性が低い銘柄に投資すれば、スリッページが大きくなるからです。スリッページとは、時価総額の小さい銘柄などに、大量の資金で買い付けようとすれば、自分達の注文で極端に値段が釣り上がってしまい、割高な売買になってしまうことを言います。

巨大ファンドの運営を考えると、スリッページによる損失を避ける為には、流動性の高い銘柄に多く投資せざるを得ず、小型株や浮動株比率の低い株への投資比率を下げざるを得ないのです。特に、新興国でも最も有望と考えられる中国とインドでは、株式上場していても半国営企業であったり、財閥グループで株式持ち合いをしているケースも非常に多いため、浮動株が少なくなり、ACWIでのウエイトが極めて少なくなっています。

但し、ファンド運営としては正解でも、個人投資家にとっては違います。浮動株が少ないことと、将来の株価パフォーマンスには、何の関連性もありません。むしろ過去のデータからは、小型株や新興国株は高いリターンを生んでおり、これらへの投資比率が下がることは、個人投資家にとってはパフォーマンスを下げることに繋がりかねません。ファンドの運用上の都合で、投資家にとっての最適なポートフォリオが組めないのは、何ともはがゆい問題です。

これを解消するには、例えば先進国株式を【TOK】で、新興国株式を【VWO】と組み合わせてポートフォリオを構築し、自らの意思で新興国の比率を増やすことしかありません。究極的には、個別株運用することが最適解ですが、それには資金が大量に必要ですし手間も掛かります。どこまで手間やリスクを取り、パフォーマンスを追求するのか(≒新興国への投資比率)は各人によって違うでしょうが、真に万能なETFなど無いことは留意しておくべきです。

 

※1&※2:世界52の証券取引所が提携している「World Federation of Exchanges」のデータを元に筆者が集計した数値。

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