PEGレシオの有効性
当サイトでは、様々な統計データから低PERなど「バリュー株」の有効性を説いています。しかしバリュー株の定義である「割安」というのは、PERだけで単純比較できるものではありません。例えば、とんでもない高成長を続ける企業ならPERが30倍でも割安ですし、今後は成長率がほとんど見込めない企業ならPERが5倍でも割高でしょう。
そこで、バリュー株の査定方法としてPERを補完する存在が「PEGレシオ」です。PEGレシオとは、PERを一株利益成長率(の数字)で割って算出します。例えばPERが20倍でEPS成長率が8%ならば【20÷8=2.5】となりますから、この企業のPEGレシオは2.5となります。一般的にPEGレシオは1〜2の間が標準的で、2を超えると割高、1未満なら割安と判断できます。
下記の例でいうと、A社はB社に比べてPERは割高ですが、一株利益成長率はB社を大きく上回っています。この場合、PERだけ見ればA社は割高ですが、成長力を加味したPEGレシオで見れば割安となります。
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株価 |
一株利益 |
PER |
利益成長率 |
PEGレシオ |
A社 |
1500円 |
50円 |
30倍 |
20% |
1.5 |
B社 |
1500円 |
150円 |
10倍 |
5% |
2 |
このように、一見するとPERよりも有効性が高そうに思えるPEGレシオですが、1つ大きな問題があります。それは、利益成長率をどのように算出するのかです。通常は、今後5年間の予想利益成長率を元に算出し、米ヤフーファイナンスでもこの方法を使っているようです。
しかしこの方法だと、予想成長率を幾らと見積るかに不確定要素が生じます。その企業に強気の予想をしているアナリストは、今後のEPS成長率を高めに見積もるでしょうから、PEGレシオは割安に表示されるでしょう。つまりこの方法では、予想するアナリスト・金融機関のバイアスを大きく受けてしまいます。
一方で、将来のEPS成長率ではなく、過去の実績を基準にPEGレシオを算出する方法もあります。例えば過去5年間の平均EPS成長率を出し、それを現在の株価と比較するのです。この方法なら基準となる数値が明確なので、曖昧さは無くなります。しかしこの方法も、今後も過去5年と同じペースで成長を続けられるのかという、別の不確定要素が生じます。
EPS成長率にはアナリスト予想と過去の実績値、どちらを使う?
例えばGoogleの過去5年間(2005〜10年)の一株利益成長率は、単純平均で43.1%もありました。2011年4月現在のGoogleのPERは20倍前後ですから、PEGレシオは【20÷43=0.465】となります。PEGレシオが0.5を割るというのは、極めて割安ということになります。
しかし、成長途上の小型株ならいざ知らず、Googleのような世界的覇者となった大企業が、今後も年率40%超の成長を続けるという予測は、余りに現実離れしているでしょう。売上高が1兆円を超えるような巨大企業の場合、EPS成長率は年10%を超えれば優秀で、どんなに頑張っても20%台が限界でしょう。
実際に、将来のEPS成長率を予測に使っている米ヤフーファイナンスでは、GoogleのPEGレシオは0.93と表示されています。つまり、Googleの今後の成長率を年20%程度に鈍化するとの予想を元に、ヤフーファイナンスでは表示しています。
定義文は見つかりませんでしたが、おそらく米ヤフーファイナンスでは「アナリスト予測の平均」の成長率を使っていると思われます。株価は短期的には、市場予想の平均値に対して上回ったか?下回ったか?で変動します。ゆえにヤフーファイナンスで使われている(であろう)PEGレシオ算出の方法は、かなり理に適っていると言えます。
しかし0.93という数字でも、PEGレシオとしては割安です。Googleの株価は、20倍というPERだけ見れば割安ではありませんが、成長率を加味すれば十分割安と判断できます。
現在のPER |
EPS成長率の定義 |
PEGレシオ |
評価 |
20倍 |
アナリスト予想の平均=21.5% |
0.93 |
割安 |
過去5年の実績平均値=43.1% |
0.46 |
超割安 |
いずれの算出方法でも、PEGレシオには不確実な要素が加わってしまいます。しかし、実績値として算出できるPERと、将来の予測を加味したPEGレシオ、両方を加味して判断すると、バリュー株の選択がより有効性を増すことになるでしょう。
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