低PBR投資は低PERよりも有利?
前項では、株式投資で低PER戦略が高いリターンを生むが、PERは業績による変動が激しく、金融危機下では機能しない弱点がある事を前項で解説しました。そこで、PERのように変動が激しくなく、かつ高いリターンを生む戦略として『低PBR投資戦略』が考えられます。
PBRとは「株価純資産倍率」のことで、株価が会社の純資産に対して何倍なのかを表した数値です。PBRが「1」以下だとすれば、会社の資産よりも株価の方が低い事を意味し、会社を解散して資産を株主に分配した方が利益になる状態です。つまりその会社の株を全て買い占めて自分のものとし、会社を解散すれば(理論上)その方が儲かるということです。その会社の持つ価値よりも安い価格で会社を買えるという、ある意味異常な状態です。
PBRはPERと同じく、割安株投資で重要な指標として知られています。そしてPBRは会社の純資産を基準に割安かどうかを判断しますが、資産価値というのは1年やそこらでは大きく変動しないので、数値の信頼性が比較的高いのが特長です。前項で見たように、PERは会社の業績で極端に変動するので、金融危機などの異常な状況下ではPERよりもPBRを基準に判断した方が、より正確であると言えるでしょう。
低PBR企業への投資ほどリターンは高くなる
前項と同じくジェレミー・シーゲル著の「株式投資
第4版
」に、PBRと株式リターンの相関を分析したデータが掲載されています。それによると、アメリカのS&P500の約50年間の統計では、PBRと株式リターンにはやはり逆相関の関係があり、PBRが低い(=割安株)ほど利回りは高くなる傾向がはっきりと出ています。
低PBR戦略 |
PBR分類 |
年率リターン |
最低 |
16.95% |
低 |
16.10% |
中間 |
14.37% |
高 |
12.67% |
最高 |
8.72% |
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低PER戦略 |
PER分類 |
年率リターン |
最低 |
14.30% |
低 |
13.52% |
中間 |
11.11% |
高 |
10.04% |
最高 |
8.90% |
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※注;PBRとPERの合計平均が異なるのは、前者が1958〜06年、後者が1957年〜06年と期間が異なるため。また前者の数値は、書籍ではさらに5分類されており、それを筆者が単純平均しているため。
ETF大国のアメリカでは、割安株を基準としたETFは数多く上場しています。そして、最も有名な「ラッセル1000バリューインデックス【IWD】」や「ラッセル2000バリューインデックス【IWN】」等も、PBRを割安株の選定基準として採用しています。PERではなくPBRを基準にしている理由は、やはりPBRの方が情勢による変動が小さく、割安株の基準として有効性が高いからだと思われます。
日本では割安株・バリュー投資と言えばPERを基準に語られる事が圧倒的に多いですが、実際に投資する際は、PBRの方ももっと重要視すべきだと思います。
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