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スイスがフラン売り無制限為替介入を諦めた理由

2015年1月15日、スイスが突然、フラン高に対する無制限の為替介入(2011年9月設定した1ユーロ =1.20フランを上限にする)の宣言を破棄したことで、急激なフラン高が発生しました。円に対しても、わずか数分で1フラン=115円台から166円台に40%以上も暴騰し、前代未聞の大荒れ相場となりました。この変動でFX投資家のみならず、海外ではFXの運用会社も経営破綻に追い込まれたという話も出ている位です。

ではスイス政府はなぜ、大混乱が予想されるにも関わらず、突然、無制限介入の撤回を行ったのでしょう?その理由を分析してみます。

教科書的な回答は「欧州中央銀行(ECB)が近々、量的緩和政策に踏み切るだろうとの予測から、1ユーロ =1.20フランを維持する介入額が更に膨らみ、持続不可能に陥るリスクが高まっていた」という事になります。しかし、経済に明るい人なら「自国通貨安の為替介入は簡単なんじゃないの?」という疑問が沸くはずです。

ロシアのように、自国通貨が売りまくられているのを買い支える「自国通貨買い」の介入には、原資となる資産(外貨準備)が無ければ行えません。従って必然的に、自国通貨買いの為替介入には、物理的な限界額があることになります。

一方で「自国通貨売り」の為替介入は、原資はカネを刷ること(通貨発行)だから、事実上無限大に行う事も可能です。スイスフランを安くしたければ、フラン紙幣を刷りまくればよい。通貨は刷れば刷るほど、価値は下がる(フラン安になる)から何の問題ありません。

当サイトや関連サイトでも、過去に日銀=白川総裁時代の円高デフレ期に「カネを刷れば円安誘導できる」と言い続けてきました。そして黒田総裁になり、量的緩和(=カネを刷りまくる)へと舵が切られ、ドル円相場は白川時代の80円から、120円まで円安が進みました。中央銀行がカネを刷る量を増やれば、ほぼ確実に自国通貨安へと導ける訳です。

しかしスイス政府は、 このままフラン安へと誘導を続ける事には、二つの大きなリスクがありました。これが理由で、為替誘導を放棄したのです。

含み損の拡大とインフレ加速という二つのリスク

一つめの理由は、将来の含み損が膨らむ恐れがある事です。このまま為替介入(フラン売り=ユーロ買い)を続ければ、スイスの中央銀行の金庫にはユーロ建ての資産(多くがユーロ圏の国債)が積み上がっていきます。しかしECBが量的緩和を行えば、ユーロ建て資産の価値はどんどん減価していきます。

つまり、ユーロ圏以上のスピードでフラン安へ誘導できなければ、スイスは将来(ユーロ建て国債の償還時)に損失が発生するリスクが高い事になる訳です。 自転車操業の如く、延々と輪転機を回し続けてフラン紙幣を刷り続けなければ、赤字になる訳です。

そんな事をすれば、国内で急激なインフレを招く恐れが高いです。このインフレリスクが、無制限介入を続けられなかったもう一つの理由です。スイスが行った為替介入は、通貨=フランの価値を減価させる事ですから、国内でインフレが加速する事も同時に起こります。実はこの点がスイス政府が恐れていた事で、逆に日本が少々量的緩和をしても平気でいられる部分でもあります。

端的に言うと、スイスフランの取引量は、国の経済規模に比べて大きすぎるため、インフレリスクが高いのです。通貨別の外国為替世界シェア(2013年)を見ると、日本円は23%でスイスフランは5.2%です(※注1)。つまりスイスフランのマーケット規模は、円のおよそ23%ということになります。

一方で日本のGDPは約5兆ドルだが、スイスのGDPは6500億ドルと日本の13%の規模に過ぎません。但しこれは米ドルに換算した値なので、その時の為替レートにより評価が変動するので、国の経済規模を比較するのに最適とは言えません。

もっと明確な経済規模を比べる基準として、人口が挙げられるでしょう。先進国の経済水準はどこも似たようなものなので、人口で経済規模を比べる方がGDPより現実的と言えます。日本の人口は1億2千万人以上だが、スイスはわずか800万人ほどです。即ち、スイスの経済規模(≒人口)は日本の15分の1程度、日本の7%弱だと見積もれます。

以上のロジックより、スイスという国は、日本の7%の経済規模しかないにもかかわらず、スイスフランのマーケット規模は日本の23%もある事になるのです。つまり、スイスフランの流通量は円の3倍以上も過大という事なのです。このため、為替介入で通貨安を保とうとすれば、スイスは日本の3倍以上もインフレリスクが高いという事になる訳です。経済規模に対して通貨量が多すぎるので、カネを刷って通貨安にする際のインフレリスクが、日本よりも3倍以上も高いのです。

これがスイスが自国通貨売り介入を続けられなかったもう一つの理由です。ギブアップを余儀なくされるラインが、日本よりも3倍以上早いので、ECBの量的緩和が濃厚となった動きを受けて、唐突な政策変更を余儀なくされた訳です。

※1ソース;FXなど実需以外の投機マネーの流通量も含めた数値。




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