ブラジルレアルの為替レート推移(対円&対ドル)
近年では最も人気の高い通貨である、ブラジル=レアルの為替レート推移グラフです。IMFの金融支援を打ち切った2005年以降は、対円・対ドル共に上昇傾向です。金融危機以降の米ドル安もあって、特にドルに対しては大きな上昇傾向を描いています(グラフは上に行くほどレアル高であることを示す)。
但し、ブラジル政府はレアル高を快く思っていません。自国通貨高だと輸出産業にマイナスになりますし、ブラジルは食料や原油も自給できているため、輸入価格が安くなっても国民への恩恵は小さいのです。そのため政府は、海外からの投資に関して課税を強めるなど、レアル高抑制政策を次々に打ち出しています。
まず2009年10月には債券や株式取引に2%の課税、そして債券への課税は2010年10月までに6%に引き上げられました。2011年1月には、金融機関の米ドル売り持ち高に対して強制預託金制度を適用。同年4月には、外貨建て債券発行等に関する金融取引税(IOF税)の課税強化。このIOF税は7月に更に強化されました。このような通貨高抑制策も空しく、レアルの上昇圧力は中々消えていません(11年8月時点で1レアル=約0.63ドル)。
インフレリスク低減と通貨高抑制のジレンマ
本来なら自国通貨高の抑制は、マネーサプライを増やす(=中央銀行がお金を刷りまくる)ことで簡単に解消できます(※注1)。ところがブラジルでは、慢性的に高インフレに悩まされており、マネーサプライを増やせば更にインフレが進むリスクがあるので、簡単には抑制できない状況に陥っています。
一方でインフレ対策は、政策金利を上げて物価を抑制するのが常套手段ですが、金利を上げれば海外から高金利目当ての資金流入が増えます。つまりブラジルでは、インフレと通貨高のトレードオフの関係に悩まされ、有効な手立てがないのです。そのため、とりあえずは海外資金の流入を抑制する位しか、レアル高の対処法が無い状況です。
近年のブラジルの政策金利推移 |
〜10年3月 |
4〜5月 |
6月 |
7〜12月 |
11年1〜2月 |
3月 |
4〜6月 |
8.75% |
9.5% |
10.25% |
10.75% |
11.25% |
11.75% |
12.0% |
新興国の通貨は、高い経済成長を原動力に(先進国に対して)切り上がっていくのが自然です(バラッサ・サミュエルソン効果)。中長期的に見れば、ブラジルは経済成長を優先し、通貨高を容認していかざるを得ないでしょう。
ゆえに長期的に見れば、ブラジルへの投資は、レアル円のレートが切り上がる「為替差益」を期待できます。しかし、海外からの投資への課税が強化されていくリスクがあることは、十分に把握しておくべきでしょう。また、日本の円高が(日銀の姿勢から)当面は解消しそうもないので、短期的には為替差損が生じるリスクもあることを理解しておくべきです。 ※注1:日本の円高は、日銀がマネタリーベースを増やせば簡単に防げ、しかもデフレも解消できる⇒為替介入は無意味。
※付録:レアル=円・ドルの為替レート時系列ファイル(エクセル)。
|