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購買力平価説は無意味である!

為替レートの決定理論の一つに、購買力平価説という考え方があります。購買力平価説とは、為替相場は国毎の物価の違いを反映したレートに収束するという考え方です。購買力平価は「絶対的」と「相対的」の2種類がありますが、ここではまず絶対的購買力平価説について考えます。

まず最初に、絶対的購買力平価は完全に無意味な理論です。なぜなら、この理屈が成立する為には余りにも多くの問題点があり、現実性が全くない話だからです。

絶対的購買力平価が成立する「一物一価」が成り立つには、価格差を反映する”裁定”が入ることが大前提になります。例えば、金やプラチナなどの貴金属価格が、東京とニューヨークで差が生じていれば、たちまち機関投資家が裁定取引を入れてきます(高い方を売り、安い方を買う)。こうすれば、やがて価格の乖離が縮まることで利益が上がるからです。

しかし、投資家達によって裁定取引が入る物は、あくまで金融商品など一部に限られます。東京とニューヨークで、コカコーラやビッグマックの価格差があっても、機関投資家から裁定が入る訳ありませんし、アメリカのビッグマックがどれだけ安くても直輸入して喰おうとする人もいませんよね。

また国によっては、輸入品には余分な人件費や関税なども掛かります。シボレーの自動車はアメリカ本国よりも日本で買う方がはるかに高額ですが、関税や仲介業者の手数料があるので当たり前です。かといって、裁定取引(自分で輸入する)しようにも、輸送コストや保証・メンテナンスが受けられない等があるため、外車を直輸入する人はほとんどいません。

購買力平価は通常、消費者物価(CPI)などが基準となりますが、一般庶民の消費財が国毎に差があるのは当たり前です。食糧を自給できるアメリカやフランスと、4割しか自給できない日本(注)では、食料価格に差があるのは当然です。世界最大級の産油国であるロシアと、原油自給率がほぼゼロな日本で、ガソリンや灯油の価格が違うのも当然ですし、プラスチックなど石油製品の値段にも影響が及んできます。

このように、同じ商品でも国毎に物価が違うのは当然であり、しかも一般消費財には裁定取引が入る余地はありません。この時点で、絶対的購買力平価説が無理がある理論だと言うことがはっきりしますね。

金利差(円キャリートレード)が購買力平価を覆す

一方で、相対的購買力平価説というのは、為替レートは2国間のインフレ率に準じて変動するという考え方です。インフレ率が高いというのは、言い換えれば「通貨の価値が大きく下落している」ということです。ゆえに二国間の為替レートは、インフレ率が高い国の為替が下落するという理屈です(詳しくは米ドルの価値低下=円高とは限らないにて)。

確かに相対的購買力平価説は、ある程度は理屈の通る法則でしたが、近年では崩れつつあります。2000年代に入り、激しいデフレで通貨価値が上昇しているはずの日本円が、世界のほぼ全ての通貨に対して円安が続いていた現象が、相対的購買力平価説を真っ向から否定しています。

これは、低金利の円で資金調達し、高金利国で運用する「円キャリートレード」が原因です。特に2005年以降は、ネットでのFX取引が個人にも広まったことで、円売り=外貨買いの需要が極端に増えたことも、円安を助長しました。FXは数十倍のレバレッジが掛けられるので、例えば100万円しか資金が無い個人投資家でも、数千万円分の円売り・外貨買いを行うことが可能なのです。

ところが2008年の金融危機以降、今度は極端な円高になりました。世界各国が自国通貨の切り下げ合戦を激化させていることが原因です。FRBやECBがマネタリーベースを激増させていることは、国債などの資産を直接買い支えるという意味だけでなく、自国通貨が安いほど貿易で大きな利益を稼げる為、意図的に通貨安へ誘導させるという効果もあるからです。

そして世界で唯一、マネタリーベースを増やさない日銀のせいで、日本は円高に苦しめられることになっています。日本はGDPが欧米よりもより大きく減少しているのに、強烈な円高が襲っているという事実は、為替の基本とされる「国力に比例する」という理屈を真っ向から否定しています。

購買力平価説は、グスタフ・カッセルが1921年に発表した理論ですが、当時は国際的な資本移動はまだ少なく、現在とは経済の前提条件が違いすぎます。カッセルの時代には、円キャリートレードなど想像だに出来なかったことです。

天動説が地動説に改められたことと同様に、経済理論も時代の変化と共に訂正されるべきものなはずです。21世紀の世界経済は、為替レートは購買力平価説にも、国力比例説にも合致しない、新たな領域に入り始めたのです。

 

注;日本の食料自給率は「カロリーベース」という、世界でも例が無い方法で計算されており、標準的な自給率では6割以上あると考えられている。農水省が利権を守る為、カロリーベースという奇天烈な計算を行っているそうだが、本題から逸れるので省略。詳しくは「日本は世界5位の農業大国(浅川 芳裕著)」などへ

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